伊万里での調査

伊万里での調査

Posted by on 1月 15, 2017 in プロジェクト

伊万里といえば、伊万里焼が一番頻出する回答でしょうか?
この写真は、私の実家にあった伊万里焼です。
(裏の糸底の部分に描かれている銘からネットで調べました)

祖父母から引き継いだもので、実家の父・母ともに「なんでも鑑定団」というテレビ番組が好きなのですが、「うちにあるお皿、鑑定してもらってみたいね〜」なんて言っています。

そして、これが私が伊万里にて絵付け体験をして作った、蕎麦猪口です(笑)

何事も体験をしてみるのは大切で、いかに伊万里の絵付けが繊細で、とても技術が高いものか、集中力が必要なものなのかが身をもってわかります。
ちなみに、絵柄は、私の好きなカラーというお花を選んでみました。
改めて、なんて大雑把な作品・・・

そして、私も銘を入れたい!と思い、入れたのがこれ。

徳利とお猪口をモチーフにしてみました。

伊万里には、昨年の2月から通い始めて、はや13回目。
美瑛で3年かかっているフェノロジーカレンダーの作成を、PTLを受講している学生さんとともに1年で作ってみようというある意味無謀な企画で、地域資源調査を行っています。
調査の調整をしていただいている伊万里市教育委員会の方々、そしていろいろなお話を聞かせていただける方々には本当に感謝です。

これまで、公民館単位でお住まいの方に集まっていただいたり、漁師さん、お茶・黒米・伊万里牛などの生産者さん、農協の職員さん、大川内山のおかみの会の方などなど、50名以上の方々に聞き取りを行ってきましたが、今回13回目にして初めて、伊万里焼の職人さんに話をうかがいました。

お集まりいただいたのは3名の若手職人さん。
それぞれに大学進学(製陶とは実質関係のない学問分野)や社会人経験を経て、子供の頃から当たり前だった伊万里焼の良さを再発見されて、製陶技術を学び、入社されている方々でした。

実際に伊万里焼を作り、それをお客さんに販売されている方々のお話は、想像以上に面白い!

まず、窯元さんや職人さん(作家さん)で非常に多様性があること。伊万里焼も伝統的な技法を受け継いだ作品を作りながらも、大学で学んだことを生かして新しい作品づくりを行っている方もいらっしゃれば、商社と商品開発を行っている方もいらっしゃる。そして、それぞれに製陶する上での、好き/やりがいを感じる工程も違う。ろくろでの成形が好きという方、細かな模様を絵付けすることが好きな方、また、消費者のニーズを把握した上で、伊万里焼らしさを出しつつ、コストを計算しながら商品のデザインを考えることが好きな方。

また、それぞれに作家活動をしながらも、ある程度「産業化」することが必要という話も、興味深いものでした。ここでいう産業化とは効率良く量を作るということ。実は、伊万里焼は、土の採取や生地づくりから全て行っている小鹿田焼(大分県日田市)とは異なり、ある程度分業しています。やはり好景気だった時から製陶量が1/6程度になっている中で、専門で生地づくりを行っている協力会社さんが減少している。その協力会社さんに、安定して経営をしてもらうためにも、産業としての量が必要だということなのです。

あと、お客さんとのコミュニケーションのお話も面白い。それぞれの窯元のリピーターは、作品を作家さんの人柄やライフスタイルとともに購入しているというのです。そういった方々は展示会などでも、会場の入場料(結構な金額です)を払っているにもかかわらず、お土産を持って会いにこられるとのこと。つまり、生産者・消費者という関係性を超えて、人と人との繋がりになっているということ。私は「おもてなし」という言葉があまり好きではないのですが、なぜ好きではないかというと、そこに「お客様は神様です」的な発想が透けて見える気がするから。でも、白川村で話を聞いてもそうですが、昔から好きで通っている方(ヘビーなリピーター)は、地元の方と、お店の人・お客さんという関係を超えた人間 対 人間の関係を結んでいる。お互い、人間としてされて嬉しいことをする、というシンプルなコミュニケーションが、最も良い関係なのではないかと感じるのです。まさに、伊万里の窯元さんは、そういう関係をお客さんと結び、お客さんが完全にファンとなっている。

また、肥前エリアは、有名どころの窯業地域が分布していますが、有田焼・波佐見焼・伊万里焼のそれぞれの商品展開の違いと、それがどういった要因で違いが生まれているかについても、教えていただきました。例えば、近年、波佐見焼をおしゃれインテリアショップや雑貨屋さんで見ることが多かったり、友人のSNSで波佐見に行ったり、波佐見の焼き物を買ったという投稿をチラホラ見ていましたが、波佐見焼のもともとの生産体制や、地元商社があるからこそ可能なブランド展開が背景にあったことは全く知りませんでした。窯業地域でそれぞれに条件が異なる中で、伊万里焼をどう地域で継承していくか真剣に考えていらっしゃって、そのアイデアは、非常にクリエイティブ。

まさに我々が今回聞いた話は、「今の伊万里焼」そして「将来の伊万里焼」の話。
伊万里焼の歴史や特徴だけではない、人の思いを含む「生きた伊万里焼」を紹介できるようなものにしていきたいな、とふつふつと感じています。

言うは易しで、編集作業はこれから。学生さん、最後までついてきてくれるかしら、という不安を抱きつつ、エイヤ!と紙面のデザインをこれからの2か月間で行っていきます。

2017年

2017年

Posted by on 1月 13, 2017 in 未分類

九州大学に着任して、1年3か月が過ぎました。
ずっと一緒に仕事をしてきた恩師から、そして長年のフィールドだった白川村からも離れて、この3年でどうしてもやりたいと思うことあります。

それは、自分のこれまで取り組んできた研究やプロジェクトの成果をアウトプットすること。
研究として正式に取り組んできたことだけではなく、自分が白川村に住んで、美瑛町の方とコミュニケーションをとる中で感じ取った研究未満のことも大切にしたい。
また、アウトプットの方法も論文に書くということも大事だけれども、改めて客観的に俯瞰し、必要ならば軌道修正し、新たに研究を展開していきたいという思いがあります。

私の研究の領域は、簡単に言うと文化的景観の保全や観光振興なのですが、特に前者は適用できる制度が決まっていたり、文化財としての蓄積された知識が前提になることが多く、ゼロベースから考えることは少ないのが現状です。
また、チーム制でプロジェクトに取り組んでいることもあり、チームボスの考え方を理解し、みんなで力を合わせて展開するといった状況にならざるをえません。
もちろん、それぞれの地域の個性をどう読み解くか、それをどうマネジメントするのかは地域のオリジナリティが求められるわけで、研究としての価値はあるのですが、研究の本当の意義を、社会の中での位置付けをうまく説明できなかったりする。
結局それでどういうことが起こるかというと、研究のプロセスも含め、本当にそれで良かったのかどうか、自分自身が評価できない状態で不安なまま終わる。
正しかったか、正しくなかったかを知りたいというよりも、自分の立ち位置を自覚して、そこで最大限の働きかけができたかどうかの自信を持ちたい。

そういった状態を解決するため、自分が取り組んできたことがどういうことなのか、自覚したかったし、これから個人として(また新しいチームを組んで)どう研究を展開したいのか、自分の胸にちゃんと問いたかった。

そういうことを、やっぱり日々の業務に流されながらも漠然と考えていたわけですが、最近、都市計画という専門分野だけを前提にして考えていては、答えが出せないのではないか? と思うようになりました。

そのきっかけは、北海道大学の観光に関する研究会で、言語学がご専門の先生が発表された内容を聞いた時に、現場に埋没し、凝り固まっていた考え方に風穴を通してもらった、可能性を広げてもらったように感じたことが根底にあります。

また、都市史がご専門の陣内秀信先生が『イタリア都市の空間人類学』という著書で、「都市は、モノとしての形態や構造、目に見える景観だけで捉えられるものではない。人々の営み、心性、身体性、人間関係、生業、場所との結び付きや意味、記憶、聖と俗、祝祭、信仰のあり方や自然観などと深く関係している。人類学・民俗学、社会史等の領域の研究者たちとの共同研究を行った経験が、こうした考え方に導いてくれた。」と指摘されていたことも。

また、まだ積ん読状態ですが、都市計画がご専門の蓑原敬先生が、社会学がご専門の宮台真司先生と対談をしている『まちづくりの哲学 都市計画が語らなかった「場所」と「世界」』なんかも、思わず買ってしまいました。

何を言いたいかというと、これまで研究を一緒に行ってきたチームや、どっぷり浸かっていた白川村や美瑛町という地域から一旦離れる、ということだけではなく、都市計画という分野から出てみるということも必要なのではないか? ということです。
それは都市計画を専門としないということでは全くなく、都市計画の専門家として、その分野の限界と可能性を自覚し、立ち位置を改めてはっきりさせ、足りない部分を他の学問分野の先生と協働をしていくということなのではないかな?と思います。

そして、幾つかの文献を読み漁る中で、少しずつですが自分の経験や研究成果が客観的にどういうものなのか言語化できそうな感覚が湧いてきて、「これ、きちんと表現したい」という強い気持ちに変わりつつあります。

今年はこれを最優先に取り組んでいきたい。
なんだか最後は決意表明みたいになりましたが、2017年、どうぞ宜しくお願いいたします。