「まち」にとっての「ミュージアム」

Posted by on 1月 15, 2016 in 出張

京都文化博物館で行われたシンポジウムにて、お話をさせて頂く機会がありました。ミュージアムがテーマであり、学芸員としての経歴や、そういった文化施設で働いた経験もないため、実践的な話をすることができなかったのですが、地域にとってミュージアムに期待することが何か、改めて考えるきっかけになりました。

このシンポジウムを前に、今年度3回、京都文化博物館と、博物館が立地する「三条」と「姉小路」という2つの地域に伺わせていただきました。京都文化博物館が地域のまちづくり団体と協働し、地域の文化資源の発掘(発掘と言っても土の中に埋もれているものではなく、生活やその空間の中で埋もれているものにスポットライトを当てる作業)を行うためです。この取り組みに、文化資源の保存活用が専門の北海道大学の村上佳代先生と参画しました。

京都というまちを訪れた人は多いかと思います。私が初めて訪れたのは中学校の修学旅行でした。その時訪れたところと言えば、清水寺、産寧坂、金閣寺、銀閣寺、南禅寺、下鴨神社、三十三間堂、嵐山…
私のような旅行をした人は多いのではないでしょうか? そこでは同級生や引率の先生以外、ホテルや店舗の従業員と少し話すくらいで誰とも話すことはありませんでした。

今回訪れた二つの地域は、人が実際にお商売をしていたり、住んでいたりする場所。今回の取り組みに参加する中でまず感じたのは、上記の観光スポットとなっている寺社などの他にも、日常の暮らしの中にたくさんの歴史が刻まれた場所が存在していること。まさに京都という場所で、私たちがその歴史や文化に触れられるのは、そこに住み、それらを誇りに思い、実際に大切にしているたくさんの人がいるから。想像力を働かせればあたりまえの話。でも、そのあたりまえが見えなくなるのが、観光というものの一つの傾向かもしれません。

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三条通りにはこのような近代建築が多く残されています。三条通りは三条大路というかつてのメインストリートだったため、銀行や保険会社、新聞社が洋風の重厚な建築で立地していたのです。現在は商店が多く、実はこの建物、とってもオシャレなアパレルショップが入っています。

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この通りには、Paul Smithが入っている歴史的な町家も。

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こちらは、姉小路にある「八百三」さん。創業1708年(驚きですが、京都では通常なのでしょうか・・・)の柚味噌を販売しているお店です。。また、「柚味噌」と描かれている看板はかの有名な北大路魯山人の作品(今はレプリカが掲げられており、本物は店内で大切に保管されています)。

どちらの通りも、まちづくり活動に熱心です。

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こちらは三条の取り組みである「まちかどミュージアム」。このお店の歴史や、かつての姿が古写真も用いながら解説されたボードが展示されています。

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こちらはぶれちゃっていますが、「姉小路界隈町式目 平成版」。かつてコミュニティのルールとして定められていた町式目を応用し、町並みを守るためのルールを現代版町式目として掲載しています。

地域の方にお話を伺ってみてわかったことはたくさんあります。老舗と言われるお店や、代々住んでいるお宅の建物だけでなく、その中にたくさんのお宝が眠っていること。それらのお宝は、今もなお大切にされ、楽しまれていること。暮らし方の中に、京都で生きることのプライドや価値観、教養が息づいていること。要は、人の営みや思いに触れられたことが、私の中で最も印象的でした。

とある旅館では、それらのお宝が室内にセンス良く飾られ、宿泊客の目を楽しませており、とあるお宅では、お祭りの時に掲げる提灯がいつでも使えるように大切にしまわれている。月ごとに飾っているお花や掛け軸、絵を変えて季節感を取り入れる。そう言ったことが、自分自信の暮らしぶりと比べられて感動する。

きっとみんながみんな、そういうことに感動するのではないと思うのですが、そこに暮らす人々に焦点をあてることが、一つの魅力になるのではないでしょうか? そうした時に博物館はどんな役割を担うことができるのか、どんな可能性があるのか。

今回のシンポジウムでは全くうまく話すことができなかったのですが、引き続き、考えていきたいテーマです。