専門家との贅沢な調査 part2

Posted by on 8月 9, 2016 in 出張

お次は美瑛へ。今回のメインは景観フォーラムへの参加でした(なんと、寒地土木研究所の松田さん提案でトークセッションのコーディネーターに・・・汗)。この景観フォーラムは、美しい村連合の総会@福岡県星野村にて、松田さんの景観に関する講演を聞いた各自治体の首長さんや担当者の方々の「ぜひ我が自治体でもお話を!」という強い要望を受けて、開催されたものです。

松田さんの講演は、熱い景観への想いと、誰でも理解しやすい論理性とで、素晴らしいものでした。よく考えたら、景観工学の専門の方の講演をちゃんと聞いたことなかったかも。どちらかというと、私は建築寄り、文化財寄りの景観なので、「心地よい景観か否か」よりも「その景観にどんな意味(歴史的・文化的)があるのか」を追い求めてきました。なので、改めて美瑛の景観そして自分の身の回りにある景観を分析する指標を与えてもらいました。景観の良し悪しは主観的な判断だと思われていますが、決してそうではなく、景観の見方を学ぶことで、かなり技術的により心地よいものにできるのです。

トークセッションは、当初75分は長い!と思っていましたが、あっという間でした。景観審議会でお世話になっていた写真家の菊池さん、景観計画を策定する際にヒアリングをさせてもらった農家の大波さん、計画策定時に担当部署の長をされていらっしゃった中山さん(現在は観光協会にお勤めです)とご一緒させていただき、これからの景観を前向きに考えるたくさんのお話をしていただきました。

思ったのは、コミュニケーションが大切だということ。このようなフォーラムなのか、もっとざっくばらんに話せるワークショップなのかわかりませんが、まずは多種多様な立場の方々が美瑛の事想っているんだよということを、お互いに知る必要があるのではないかと思いました。その上で、農家さんに気持ちよく営みを続けてもらうために何が必要なのか、新たな観光の仕組みなどを考えていけば、意外とスムーズにいく気がする(楽天的すぎますかね・・・?)。でもそれぐらい意外とこれまで、町の単位でコミュニケーションが行われていなかったのかもしれません。私も福岡から応援したいと思いますし、景観まちづくりにいち研究者として関わり続けられればと思っています。

フォーラムの前後で、寒地土木研究所の方々と美瑛町内各所を巡ることができました。

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ご一緒させていただいた2日間とも、快晴で十勝岳がくっきり!(夏は珍しいとのこと)
麦の刈り取り真っ只中です。麦稈ロールもいたるところで見られました。

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これはとある展望スポットの近くですが、他の場所と同様、立ち入り禁止の看板とテープが貼ってあります。ご存知の方も多いかもしれませんが、来訪者の農地への立ち入りが長年の問題となっています。私たちは来訪者のモラルやマナーの問題としがちですが、景観工学的見方をすると、入ってしまいたくなる空間になってしまっているため、人間の反応(どうしても入りたくなってしまう気持ち)を踏まえた空間整備をする必要があるとのこと。

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青い池にも行きました。青い!! その青さを失わないための管理の努力についてもお話を伺うことができ、感動ひとしおでした。

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北海道のすごいところは、このような天国と見紛う空間がたくさんあるということ。こう言う空間でグランピングができたら・・・という話で盛り上がりました。観光スポットにするということではなく、まだまだ楽しめる空間が美瑛には広がっているのを感じます。このエリアの近くには、こんな場所もあります。

うまく活用すれば(それには空間の管理や運営といったことが必要になるわけですが)、もっと美瑛滞在の幅が広がります。

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こちらは白金エリアにある模範牧場! 牧草ロールがまるでアートのようです。この景色は知らなかった・・・

まだまだ底知れぬ美瑛の魅力。ですが、これからは、来訪者が魅力を一方的に享受する(消費する)だけではない美瑛への関わり方を、美瑛側から提案しなければなりません(残念ながら来訪者が考えるのには限界があります)。農家さんは、決して、環境や景観を作るために農業を営んでいるわけではありません。結果的に生み出されたこういった魅力を、もし、少し「おすそ分け」できるとしたら。十分な対策を能動的に検討しなければならないと、改めて考えた出張でした。