専門家との贅沢な調査 part1
8月1・2日は白川村、4〜6日は美瑛町に出張しておりました。白川村では、伝統的建造物群保存地区の環境物件・工作物候補の抽出基準の検討と審議会への出席、美瑛町では、景観フォーラムへの参加とその他もろもろの打ち合わせが目的でしたが、どちらも専門家の方々とご一緒させていただき、非常に楽しい時間でした。
白川村では京都女子大学の斎藤先生と。もう、白川村へ向かう車の中から、文化財がいかに最先端の分野なのか、最近の世界遺産登録の動向などなどレクチャーいただく。また、お宿でも、卒論・修論の指導から近代化遺産の保存・活用まで。なんて贅沢な時間! 専門家としてのブレない理念と価値判断、そして長年文化庁にて文化財指定に尽力されてきた功績は非常に大きく、私だけで聞くには本当に勿体無い。
次の日は、環境物件・工作物候補を実際に見て回りながら基準を議論。これまで一つ一つ流路・水路護岸・石積・シュウズ(湧水が出るポイント)などを追加特定しようとしていましたが、水の流れを単位とした、水利用システム(農地景観を含む)を一体として特定する方針となりました。確かに農村景観の保全を考えた際には、個々の要素が持つ履歴に着目しながらも、システムを重視した方が合理的。文化庁の見解でどうなるかまだわかりませんが、新しい特定方針と言えそうです。
調査では、水利システムの上流部、区の当番で管理をしているポイントに地元の方に連れて行ってもらったり、
樹種と植えられた意味を検討したり、
保存地区外ですが、立派な石積と景観に感動したり。
また、伝建審議会にもオブザーバー参加させていただきました。この日の審議会は、議論の前に現地視察が数件。その一つが犬走りの仕様。景観に合った、そして生活のニーズ(砂埃が立たないなど)も叶える技術を実験しているというもの。
みんな真剣に松本さんの説明に耳を傾ける。建設業の方もいらっしゃるので、強度や耐久性もチェック。慎重に1件ずつ確認し、議論し、より良い方向性へ持って行くことの積み重ねです。守る会(白川郷荻町集落の自然環境を守る会)での議論も含め、本当にこの伝統的建造物群保存地区のこの仕組みは凄い! 昭和51年に重要伝統的建造物群として選定されて以降、景観を変えるすべての行為は、守る会・教育委員会で、そして重要なものは審議会で議論されてきました。多分、総数は2,000件を超えるはず。
世界遺産の知名度以上に、こう言った取り組みの事をもっと発信していってもいいのではないかな?と思います。きっと、文化的な景観を守りたいと思っている世界中の人を勇気づけられるはず。
続く