文化的景観研究集会に参加してきました

Posted by on 8月 2, 2016 in 学会活動

奈良文化財研究所主催の第8回文化的景観研究集会に参加してきました。
お名前とお噂(いい噂です!)は以前より聞いていたけれども、なかなかお会いできなかった方や、お久しぶりの方とお会いでき、また大学関係者だけでなく、文化的景観の選定地で奮闘していらっしゃる自治体職員の方々の経験や悩みをうかがうことができ、非常に有意義な会でした。

写真を撮ろう撮ろうと思っていつも忘れてしまうのですが、会を増すごとに参加者が増えているようで、大盛況。そして、堅苦しくなくとってもアットホームな雰囲気。
ワークショップ形式で、文化的景観の課題を議論するといったものでしたが、時間オーバーしてもどこも議論を止めない(笑)。そのぐらい真剣。
以前、白川村で働いていた頃に、伝建協の総会に参加させてもらった時にも感じましたが、文化財に関わっていらっしゃる方は熱い方が多い。

議論の中で、気になったポイント(研究的に取り組む必要があるなと感じたこと)は、
・文化財の制度としての文化的景観と、地域の見方としての文化的景観(広義)とに分けて考える必要がある。
・高度経済成長を基盤とした都市計画から、アイデンティティを守るための都市計画への変化が必要であり、その上では文化的景観は漢方薬的な役割を果たすのではないか。
・文化的景観は、多くの学問分野が関わることのできるプラットフォームなのか? それとも文化的景観学を展開することができるのか?
・『世界遺産の文化的景観ー保全・管理のためのハンドブック』(Nora Mitchell、Mechtild Rössler、Pierre-Marie Tricaud編著、奈良文化財研究所景観研究室訳、2015年3月)では、変化のことを「change」ではなく「evolution」としている。
などでした。

議論の中で思ったのは、都市計画マスタープランの策定が全ての自治体で義務付けられているように、文化的景観が、まちづくりの基盤として把握されるべきデータベース的役割を担うべきなのではないか?ということと、様々な変化に対してルールや基準を設定するのは難しく、一つ一つのまちづくりの判断を文化的景観に照らし合わせてみることこそが、まずは大事なのではないか?ということでした。

その上で、私たちのグループのファシリテーター役の方がおっしゃていましたが、文化的景観として地域を見ることで、どういったことが可能になるのか?、事例を積み上げていく必要があるのだと思います。

また、ポスターセッションで、発表もしてみました。
名付けて(笑)「文化的景観の価値の把握と共有におけるフェノロジーカレンダーの有用性」。
北海道美瑛町を事例に、北大の真板先生と村上先生と連名です。
当日の朝までポスターを作り、kinko’sで慌てて印刷するという、なんともドタバタな状態での発表でしたし、どういった反応が得られるのか最後までドキドキ!でしたが、いろいろな方がコメントしてくださって、純粋に嬉しかったです。

観光まちづくりの手法として真板先生が開発されたカレンダーですが、文化的景観の現場でも活かせるツールなのではないかと思います(そのためには、ある意味批判的に、そして研究的にきっちりと手法や効果を分析する必要があるかと思いますが)。実際に平戸でも取り組まれていますし。もちろん空間的な分析が大前提ですが、景観・生業・生活の調査を串刺すものとして、カレンダーが補完する情報の重要性を感じています。

あぁ・・・でも、この集会がここまで充実したものとなったのは、奈文研の景観研究室で日々調査・研究されている方の人徳や、文化的景観への貢献あってこそなのだなと。
本当にありがとうございました。来年も参加・発表できるように頑張ろう。