白川村は、岐阜県北部に位置し、石川県と富山県に接した県境の村です。人口約1700人の小さな村ですが、世界文化遺産として登録されている「白川郷・五箇山の合掌造り集落」の一つである荻町集落を擁しており、年間150万人の観光客が訪れます。
人が暮らしている世界遺産(リビングヘリテージ)を継承するためには、文化遺産としての価値を保存する観点だけではなく、生活環境としての質の担保、観光地としての持続性の追求などの観点も加えた「マネジメント」が必要となります。世界遺産としての集落景観の価値の明確化、及び近年問題となっている景観変容とその要因について科学的な調査研究を行うとともに、地元コミュニティがかかえている地域課題について調査研究を行い、文化財保存の枠組みを超えた持続的な世界遺産マネジメントの仕組みの構築を目指しています。これらの調査研究は具体的に、地域住民・行政・国などのステイクホルダを巻き込んだボトムアップ型の遺産保護マネジメントプラン「世界遺産マスタープラン」の策定に生かされています。
また、白川村では下記のような研究も行っています。
・白川村全域における景観形成、およびバッファゾーンの景観保全にかんする調査研究
白川村の魅力は、なんといっても霊峰白山に代表される雄大な山々と、豪雪地帯という厳しい自然環境の中で長年人が暮らし続けてきた歴史によって形成された景観が基盤となっています。世界遺産の合掌造り集落も、荻町展望台から見た自然環境と一体となった景観が、人々の心を打っています。一方で白川村には、世界遺産の集客力を目当てにした観光開発の圧力もかかりやすく、適切な開発のコントロール(規制・誘導)が必要不可欠です。白川村全体をフィールドとし、景観構造分析、土地利用調査、既存法制度による規制状況の把握などを行い、白川村らしい景観を基盤にした開発誘導(戦略的土地利用)の仕組みを調査研究しています。また、バッファゾーンとなっている世界遺産の周辺地域の景観保全のあり方を検討し、土地利用の特性に基づくメリハリのある開発規制を実現するための、白川村景観条例および景観計画の改正に取り組んでいます。
・地域特性を生かし、地域に貢献する観光振興にかんする調査研究