中川理 『風景学 ~風景と景観をめぐる歴史と現在』

Posted by on 7月 8, 2016 in

昨年度は着任時期が中途半端だったこともあり出来ませんでしたが、今年度からはゼミを行うようになりました。1つは研究・論文指導のためのゼミ。同じユーザー感性学専攻の感性コミュニケーションコースの三島美佐子先生の研究室と合同ゼミという形で開催しています。もう一つは文献講読ゼミ。私の学生時代も研究室で行われていて、その時は長峰晴夫先生の『第 3 世界の地域開発』(名古屋大学出版会 1985年)でした。その当時は、実践の経験もなくちんぷんかんぷん(本当に!)でしたが、改めて白川村で働いていた時に読んだ時には、涙ものの名著でした。

思い出話はさておき、今年の前期は中川理先生の『風景学 ~風景と景観をめぐる歴史と現在』(共立出版 2008年)を読んでいます。学生さんが1名のため、私も参加して、交互に1章ずつ担当し、概要を説明し、感想や疑問を共有しながら議論をするというものです。

私も、風景や景観を対象に研究してきた・いるわけですが、風景や景観は様々な学問分野で取り上げられ、理論構築や実践が積み重ねられてきました。そして、それらの概念の出現や取り上げられ方は、歴史の動き(政治、社会、産業、生活等々の変化)と密接に関わっています。その大きな流れが、この本では整理されています。

私はどちらかというと、現場で学び、実践することを繰り返してきたわけですが、自分がどの流れに属していて、自分と違う景観の取り扱い方もあるのだということに自覚的になることが大事だと思ったので、この本を選びました。(もちろん、学生さんの興味とも擦り合わせてのことですが。)以前、ベネディクト・アンダーソンの本を読んだ感想の投稿で、「自分が行っている研究が、いかに『その場の事実切り取り型』かということを反省。」ということを書きましたが、せめてそうならないよう努力はしよう!ということで。

この本をひとまずの基準点に起きつつ、自分の経験や考えを整理しています。共感するところもあれば、「それだけじゃない!」と強く思う部分もありますが、後者の部分を整理して、論文としてアウトプットしなければならないということなのでしょう(焦)。

まだ中盤で、読み切るまでには数回ありますが、次は何を読もう・・・その時には観光について学びたい学生さんが少し増えている予定なので、観光の基礎的な文献を講読したいなと思っています。